カトカラの舞う夜更け
新里達也 (著)
海游舎 (2017/8/26)
"アジアを中心に世界のカミキリムシの多様性を記述する昆虫学者である著者が、過去20年くらいの間に自然科学関係の
雑誌を主体に書かれた随筆や小論文が掲載されている。前日本甲虫学会会長であった著者が、「カトカラ(鱗翅目蛾類の
シタバガ類であるCatocala属)の舞う夜更け」とした所以は、同タイトルの最終章で著者と親交のある(あった)虫屋さんとの
エピソードを読み終えた後にわかってくるでしょう。装丁のカトカラの挿絵がたいへん美しい。
"
虫屋や研究者でないと
学名やややこしい和名は読むのに辛いでありましょう。
分類学にふれた経験がなければ、読解も難しいかもしれない。
しかし、明治神宮の冊子に連載されたエッセイあたりから
終わりに近づくにつれ、人生、黄昏にかかる心情を綴っていて、
昆虫に関心がない誰にも、機会があれば、お読みいただきたい。
ボクの場合は、新里さんは大昔に台湾で採集された頃に
名前は覚えたし、養老孟司さんをはじめ、知っている名前が
ぞろぞろ出てくる。
面識があったり、二人で酒を飲み交わした人もいる。
皆、先輩の虫屋だ。
アオカミキリ(「アオ研の頃」)の稿で出てくる 大谷卓也さんとは
よく電話した。
彼が冒険家を卒業して始めた昭南インセクトから
しばしばインドネシアの蝶の三角紙標本を買ったからだ。
本書は先立った虫屋たちの思い出をいくつも収録するが、
大谷卓也さんの早世については触れていない。