季節・天候や乗車率に左右されるが,急な坂を登ること40〜50分ほど。
車道が尽きると目の前に棚田が広がっている。
マリコン村はジープが発着する集落と,広大な棚田の向こうにある集落に分かれている。
ふたつの集落は棚田のなかを通る細い一本の道で結ばれている。その中間に馬の背のような丘が横たわっていて,米倉群,学校,集会場,教会が建っている。
旅行者は1本道を行きつ戻りつして眺めるしかないが,道は起伏があって,棚田は360度,様々な表情を見せ,飽きることがない。
大崎正治や合田 濤らの民俗学者が学生達と研究生活をおくった歴史を村人は覚えていて,概して日本人に対して好意的である。
マリコンをはじめマウンテンプロビンス州では,イフガオ州(バナウエ周辺)の場合よりも人々は農耕に専念しているふうにみえる。水の調整,雑草とり,苗の間引きや植え替えなど,管理が行き届いた田んぼを見れば,生産性の高さがうかがえる。
そして一方,霊的な信仰に基づく冠婚葬祭や農耕の儀礼が今日も行われており,旅行者は注意を要する。
まず,忌休日(ティアー)である。
忌休日は稲作の無事が祈願され,朝から翌夜明けまで,あるいは数日間,”農作業が禁じられ” “村の出入りが禁じられる”。
村の古老が予告もなく突然,ティアーを宣言すると,村への道が遮断され,何人も通行ができなくなる。これを破った者には罰金が課せられる。
忌休日は,籾まき、田植え、草取り、稲刈りを行う直前の,年4回行われる由。
さらには,各家ごとに農作業の節目節目に行われる儀礼,ことに田んぼで鶏を生贄にする場面に断りもなく近寄ったり,レンズを向けることは慎まねばならない。
また,米倉の中で人が寝てはならないし、住まいでは米を貯めてはならないというしきたりも生きており,米蔵は,軒を借りることも避けたほうが良い,と思う。〈続く〉
「マッチをくれんか?」
参考:
森谷 裕美子(2004)
ジェンダーの民族誌―フィリピン・ボントックにおける女性と社会
ポリタンコスモ
文化としての住まい」-02_村のひろがりと忌籠り(2006)
http://poly-tan.com/
森谷 裕美子(2004)
ジェンダーの民族誌―フィリピン・ボントックにおける女性と社会
ポリタンコスモ
文化としての住まい」-02_村のひろがりと忌籠り(2006)
http://poly-tan.com/