フルーツ・ハンター—果物をめぐる冒険とビジネス
アダム・リース ゴウルナー (著)
立石 光子 (翻訳)
白水社 (2009/09)
文学上の果物は魅力的とはいえ,ぼくはふだん食べている実物の果物のことも知りたくなった。
............ リンゴのマッキントッシュは失恋に端を発する。
ジョン・マッキントッシュは1777年,ニューヨークで生まれた。若いころ,ドリー・アーウィンと恋仲になるが,ドリーの両親は王党派でアメリカ独立にも娘の結婚にも反対。十八歳のマッキントッシュはカナダに移住したドリー一家のあとを追った。
ところが,悲しいかな,コーンウォールの野営地に到着したときには,ドリーはすでに帰らぬ人となっていたのである。悲嘆にくれたマッキントッシュはドリーが死んだことを確かめるために,亡骸を掘り起こした。変わり果てた姿を見てひとしきり泣いたあと,野営地をあとにして,やがてオンタリオ州のイロコイ族の村に近い狭い土地に住みつく。
そのあたりは一面,雑草とイバラと低木が生い茂っていた。それを刈りとると,リンゴの苗木が二十本見つかった。みなすぐに枯れてしまったが,一本だけ残った木がみごとな実をつけた。
その枝を接ぎ木で増やした結果,二十世紀初めにはマッキントッシュは広く栽培されるようになった。
世界中のめずらしい果物を紹介しつつ、果物をめぐる冒険と歴史、果物ビジネスの可能性、果物の魅力に取り憑かれた奇人変人たちなど、果物と人間とのかかわりを幅広い視点からとらえる。
「BOOK」 データベースより 今日の一冊。